都区立一貫校の大学合格実績

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執筆者

林川 敬

吉祥寺校校長・武蔵高校附属中学校専門担当

学校ごとの「大学合格実績」は、受検生の親ならずとも大いに興味があるところだと思いますが、いくつか注意点があるのはご存じでしょうか。

 

大学入試直後の時期に、週刊誌やインターネット情報に「〇〇大、合格ランキング」なるものが発表されることを目にすることが多いと思います。「ランキング」と聞くと知りたくなってしまうのが人の常ですが、そのデータの殆どは「合格数」で計算されています。

 

たしかに東京大学などの最難関大学であれば、合格者1名を輩出するのに相当な時間と労力がかかりますし、合格数の何倍かの生徒がその大学を志望している、つまりそれだけ優秀な生徒が存在している訳ですから、「合格数」でランキングにするのも頷けます。

 

しかし、「合格数」だけでその中学、高校の「合格させる力」を判断できるでしょうか。あまりにも単純な比較かもしれませんが、たとえば1000人の卒業生がいる学校で10人の合格が出た場合と、50人の卒業生から10人の合格が出た場合と、同じ「10人の合格数」ですが「合格率」は雲泥の差です。「合格数」と同時に「合格率」も押さえておくべきです。

 

また、「合格数」や「合格率」が現役生のみの結果なのか、浪人生も含んでの結果なのかも気になります。特に、中高一貫校に通わせる保護者であればなおさらでしょう。せっかく苦労して合格した一貫校なのに、結局浪人してしまうのでは「何のために通わせたのか」とつい口に出したくなる人も多いはずです。しかも、同じ浪人でもそれなりの大学には現役で合格した、でも、どうしても行きたい第一志望に合格したいので浪人するという場合と、勉強に集中できず結果が散々だったという場合とではやはり「浪人」の意味合いが大きく異なります。

 

「長い人生のなかで浪人の1年など、遠回りの内に入らない」……こんな考え方もあるのでしょうが、残念ながら、「どんな浪人の仕方をしたのか」は数字からは分かりません。ひとつだけ言えるのは、浪人は少ないに越したことはない、つまり、現役合格率の高い一貫校に進学させて損はないということです。ちなみに、都区立一貫校はほとんどの学校が「浪人率10%台」です。都立高校はもちろん、私立一貫校と比較しても相対的に低いのも都区立一貫校の魅力のひとつです。

 

では、都区立一貫校の大学合格実績はどうなのか?

前述の「現役合格率」で言えば、私立一貫難関校や都立トップ校と遜色ない結果を残しています。国公立大学は30~40%台、私立最難関の「早大」「慶大」「上智大」「東京理科大」では60%~100%台という結果が今年も出ています。思考力、表現力を鍛えて入学した生徒たちが国立大入試で結果を出す、これは想像に難くありませんが、「知識」「暗記」「テクニック」が要求される私立大学入試で、これだけ高い合格率を出しているのは驚くべき事実です。「都立一貫校に入って頑張れば、早慶上理には行ける」と大きな安心と期待が持てる合格実績、これが都区立一貫校の最大の魅力と言って良いでしょう。

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