動画視聴による予習の効用とリスク

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執筆者

石山 純也

中野校校長 / 富士・大泉高校附属中学校専門担当

E-styleでは、小5と小6の一部の授業に「動画視聴による予習」を取り入れています。

今回のコラムでは、この動画視聴による予習の効用とリスクについて説明し、効果的に使うためにはご家庭でどんなサポートが必要かということを考えてまいります。

 

動画視聴による予習は、いわゆる「反転学習」の効果を狙ったものです。

反転学習とは、授業の前に予習を行い、授業の時間には予習で学んだことについて実践的な演習やディスカッションを行うという学習方法です。生徒の理解を深め、学習意欲を高めるための優れた方法として、近年多くの教育現場で導入されています。特に中学受検を目指す小学生にとって、合格に向けて非常に有効な手段となります。

 

「動画視聴による予習」=「反転学習」には主に次の4つの効用があります。

  • 予習を通じて自主的な学習習慣が身につく

親に言われたから塾に行く、言われたから勉強をする、行って先生の話を聞くのではなく、「まず自分が動く」ところが学習サイクルの一歩目になります。予習をしないと授業に参加しても話がわからなくなるので、言われなくても自分で考え、準備をして授業に臨むようになります。何も知らずに塾に来て、先生に「今日はもののとけ方と水溶液の性質について学びます」と言われるのと、自分で「今日はもののとけ方と水溶液の性質についてさらに詳しく学ぶぞ!」と思って来るのとでは、成果が大きく変わります。

自ら調べ自ら考える精神を育み、公立中高一貫校受検に必要な自主性を引き出します。

 

  • 授業時間を有効活用できる

適性検査の性質上、試験範囲は「学習指導要領の範囲内」です。したがって、学校で習う内容は当然押さえておく必要があるのですが、それはあくまでも適性検査を解くために必要な基礎知識であり、決してむずかしいものではありません。一方で、適性検査の本番では、読解力、思考力を要求される応用的な問題ばかりが出題されます。限られた授業時間の中で基礎的なことをお伝えしつつ、応用問題まで解説しようとすると、どうしても解ける問題の数が減ってしまいます。動画で基礎的な内容を予習してくることで、授業中に新しい単元を学ぶのではなく、理解を深めるための演習や応用問題に重点を置くことができるため、学習効率が格段にアップします。

 

  • 自分の実力と課題に合わせて学習できる

反転学習のもう一つの大きな利点は、自分の実力や課題に合わせて学習を行うことができるという点です。特に小学生は得意な科目と苦手な科目の差が大きいため、同じ説

明を聞いても科目や単元によって理解度に差が生まれやすくなります。グループ学習で授業がどんどん進んでしまう場合に、「今の説明ボクだけわかってないかも」ということがあり得ますが、動画の視聴なら、「本当にわかるまで」何度でも説明を聞いたり、練習を繰り返したりすることができます。逆に、すでに知っている知識であれば、時間をかけずに学習をすることもできます。これにより、集団授業における「ついていけない」という問題が解消されます。

 

  • いつでも、どこでも、何度でも学習できる

動画の視聴は、自分の生活サイクルに合わせていつでもすることができます。習い事の都合に合わせたり、朝早く起きて勉強したり、帰省した先で勉強したり、(年度内であれば)テスト前に過去の苦手単元をもう一度勉強し直したり、体調不良で休んだときの分をあとから学んだりもできます。理解の定着と復習を効率よく行えるのも、動画視聴による学習の利点と言えます。

 

 

このように動画視聴による反転学習は、「自主的な学習習慣を身につけ」「授業時間を有効活用し」「自分の実力と課題に合わせて」「いつでもどこでも何度でも学習できる」という点で受検に対して、あるいは学習全般に対して非常に有効なのですが、一方で成果を出すためには「自己管理」と「目的意識」が求められます。

 

反転学習の成功には、生徒が授業前に予習をしっかりと行うことが不可欠です。しかし、自己管理が苦手な小学生の場合、予習を怠る可能性があります。また、目的意識が低い小学生の場合、形だけやってあるように見えても、適切に学習ができていないことが考えられます。

いずれも学力とは違う「意識」が課題になるので、とくに保護者の方には、「自分のことは自分でさせること」「目的意識を持つために将来についてたくさん話をすること」などのサポートが求められます。

E-styleにおける動画学習が小4からではなく小5からなのも、こういった背景があり、「やらされている勉強」から「やらせていただいている勉強」への意識改革が必要だからです。

これはもちろん、誰もがすぐにできるものではなく、やっていくうちにだんだんと変わっていくというものです。だからこそ早めに取り組むことと、周りからの声かけやフィードバックが必要なのです。

 

自己管理力も目的意識も、適性検査で求められる能力であると同時に、社会で求められる能力です。この受検勉強を通して、今の時代に求められる力をぜひお子様につけてあげたいですね。私はそれが必ず合格につながるものと考えています。動画による予習、ぜひ使いこなしていきましょう!

 

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