私立中併願について

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執筆者

林川 敬

吉祥寺校校長・武蔵高校附属中学校専門担当

夏も終わり、都立一貫中をお考えのお子様は過去問の演習が始めたころだと思います。「適性検査」は、基本的に初見の問題を解いていく訳ですから、取れる得点は当然安定しません。私立一貫中の過去問の様に「出題範囲」に傾向がある訳ではありませんから、「やった!最高点だ!」と喜ぶこともあれば、「あれ?手ごたえはあったのに最低点だ・・・」と落ち込むこともあるのが「適性検査」の結果です。

 

大切なのは、「何点取れたのか」ではなく、「どんな問題を、どんな考え方や解き方で解き、どれくらいの時間をかけたのか」を入念に“振り返る”ことが肝要です。「これまでに習ってきたことが使えたのか、どんな方法で解くべきだったのか、ミスをした原因は何だったのか」などをつぶさに分析し、「次はこうしよう」と“改善点を洗い出す”ことこそが、過去問演習の最大のポイントです。受検生の皆さんは、結果に振り回されることなく過去問を上手に利用していただきたいと思います。

 

このように不安定な過去問の結果をみると、「やはり一校しか受検できないのはつらいな」と感じる方も多いと思います。「最高点のときの調子が本番に当たるといいのに・・・」とため息をついてみたり、「この年度のような結果だったら・・・」と、不安に慄いてみたりと、都立一貫入試は「恐怖や不安との闘い」と言って良いほどの特徴を持っていますが、そんな時に誰もが考えるのが「私立中の併用受験」です。今回は私立中を併用受験する際の注意点をまとめてみました。

 

(私立中を併用受験いる意義)

どんな入試でも「何が起こるか分からない」と、最悪の場合まで想定して準備するべきでしょうが、特に都立中受検の場合は前述したような過去問の演習結果からも、絶対的な自信を身につけて本番に臨める人はごくわずかだと思います。逆に「もう大丈夫」と高をくくってしまうことの方がよほど怖いとも言えるでしょう。一問の配点が高いことも適性検査の特徴ですから、気の緩みが「ミス」につながりやすく、合格できない場合の理由のほぼすべての原因が「ミス」だと言っても良いほどです。そんな「一発勝負」の入試に打ち克つために、模擬試験を受検される方も多いでしょう。E-styleの塾生たちも一か月に一回は、外部会場での模擬試験で“武者修行”に励んでいます。しかし、模擬試験は本番の試験とは当然違います。本番は本番特有の緊張感とプレッシャーの中で自分と闘わなければいけません。その意味では、2月3日の本番の前に、都立適性検査と形式も内容も類似している問題を出題してくれる私立中を受検する意味は非常に大きいと思います。事前に私立中を受検している場合と、していない場合とでは自ずと結果が変わってくることは言うまでもありません。予想以上に緊張し、「今までこんなミスをしたことなど一度もなかったのに・・・」などと後悔を残す可能性は少しでも減らしておくべきだと私たちは考えています。

 

(どんな学校を併用受験するか)

まず、前提条件は都立一貫中の適性検査と似た問題が出題される学校を選ぶということです。私立中ならどこでも「候補」に入れられるわけではありません。私立受験型(4教科型)の入試形態しかない学校がほとんどですので注意が必要ですが、俗に言う「適性検査型」とか「総合型」(学校によって名称は異なります)などのように、「私立受験型」とは別に設定されている学校から受検校を選択します。

 

たとえ「併願校のひとつ」であっても、「進学したい、させたい」学校を選ぶべきです。そんな学校が併願校の中にあれば安心して都立一貫入試に臨めます。しかしながら、都立一貫中と私立一貫中は基本的には校風が異なる場合が多いですし学費なども大きく異なりますから、「ぜひ進学させたい」と積極的に選べる学校は多くはないかもしれません。ですから、“本番の練習をするためだけの学校”として選ぶのではなく、“進学させるとしたらどんな利点があるのか”という視点で私立中学校を調べてください。私立の学校ですからホームページが得られる情報も少なくありませんが、実際に学校に足を運んで調べてみることをお勧めします。都立学校にはない魅力、利点は必ずあるはずですし、「わが子を進学させる意義」は何かしら見つかるはずです。俗に言う「適性型」の入試を採用している私立中学校は、入学手続きを延期して下さる学校が多く、2月9日の都立一貫中の結果を見てから手続きすれば間に合う学校がほとんどです。併願受験させたい私立中学校の候補が見つかったら、受検までのこれからの日々の中でじっくりと考え、相談しておくのが保護者の役割とも言えるでしょう。

 

ベストではなくとも、出来る限りベターな選択で悔いを残さぬ都立一貫受検にしてください。

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