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執筆者

荒海 理恵

公立中高一貫校受検記述指導主任

外国語をマスターするためには、現地で暮らすことが一番だとよく言われます。その言語をどうしても話さないといけない状況になると、自然と話せるようになるものだ、という考え方ですね。これは作文でも同じです。文章が上手になるためには、どうしても文章で何かを伝えないといけない状況が必要です。大人がある程度文章が書けるのは、そういう状況を何度か経験しているからでしょう。

 

東京都の公立中高一貫校入試では、作文課題が出されます。「作文を書かないといけない状況」になるわけです。でも、必要性を感じている子ばかりではないようです。なかには、点数のために思ってもみないことを書いている子もいます。あまり楽しそうな表情ではありません。これは「必要性ではないのではないか」と思います。

 

ただ、小3の子は、とても楽しそうに書いています。

それはまだテストで作文を書くことがなく、ただただ「上手に書いてほめられたい!」という気持ちが強いからのように見えます。小学生が必要としているのは、テストの得点ではなく、ほめられる機会なのでしょう。

 

先日、がんばって取り組んできた宿題を生徒たちのあいだで交換させて、「先生になったつもり」でコメントを書かせてみました。ただ、「かならずほめること」という条件をつけました。まだ語彙力もそれほど多くないので、あまり意味のあるものにはならないかなと思っていましたが、とてもおもしろいコメントが多く書かれていました。

 

それぞれコメントは10個ぐらい書きます。最初は「すごいね」「きれいだね」といった、わかりやすい誉め言葉です。ただ子供たちなりに、「ずっと同じ言葉で褒めたら失礼だ」と思うようです。「~をしていてすごい!」とか「~を使っていてとてもきれいです」といった、「理由」を書き始めます。また、「すごい」や「きれい」だけでなく、「感動しました」とか「今度まねさせてもらうね」というように、誉め言葉もバリエーションも増えていきました。

 

これは作文指導をするうえで、よく注意することです。

「かならず理由を書きなさい」「同じ表現のくりかえしはさけなさい」

何度も言っても、なかなかできるようにならないです。でも、このコメントをつけるときは、自分たちで考えて表現を工夫しはじめました。

 

こういうのが「必要な状況」なのかなと思いました。結局は受検勉強であり、テストの点数が大事ではあるのですが、そのなかで少しでも「必要な状況」を作ってあげたいと思っています。

 

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