合格の資格

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執筆者

山敷 淳史

巣鴨校校長・小石川中等教育学校専門担当

ある教え子との思い出

巣鴨校の山敷です。

12/15は東京都の公立中高一貫校の入試日まで「あと50日」という日です。
この時期になると、気持ちが不安定になることが多いです。
妙に自信がある日があったり、急に意味もなく不安でいっぱいになったり。
それは受検生の皆さんだけでなく、応援する我々も同じです。
不安な気持ちになったとき、ある教え子のことをよく思い出します。

その子は小6の夏期講習までは、あまり熱意をもって勉強には取り組んでいませんでした。
今から10年以上前のことなので、今と比べるとかなり高倍率でしたし、どこか「落ちて当たり前」という気持ちもあったのかもしれません。
また塾以外の習い事も多く、うまく時間がとれなかったということもあります。
しかし9月に文化祭を見にいって、在校生が英語でまとめたレポートの束を見て、「こんなことができる人に自分もなりたい」と思ったそうです。
その日のうちに他の習い事はすべてお休みの手続きをして、自習室にきて勉強をはじめました。
そこから彼女の受検勉強は始まったのかもしれません。小6の9月なので、本気になるのが早いほうとはいえない受検でした。

受検当日、応援のために学校前にいると、向こうから彼女が歩いてくるのが見えました。
いつもより背筋を伸ばして、肩を大きくゆするようにして、微笑みながら歩いていました。
小柄な子だったのですが、そのときはいつもより大きく見えました。

 

「合格したい」という気持ちを言葉に出す勇気

後から聞いたのですが、志望校最寄りの駅で降りたとき、まわりにいる受検生はみんな背が高く、眼鏡をかけていたそうです。
彼女はそれを見て意味もなく、「勝てないかもしれない」と思った。
でもすぐに、その「背が高くて、眼鏡をかけている子」が全員男の子だということに気付いたそうです。
「自分の敵はあの子たちではない。女の子たちに勝てばいいんだ」(都立の一貫校は、男女別に募集しています)と自分に言い聞かせ、「勝てそうな相手」を見つけようと思いながら試験会場まで歩いていたのが、背筋を伸ばした歩き方になっていました。

おそらく本当は、学習時間が足りないことがずっと不安だったのだと思います。中学に入ってから、「小学校のとき長く勉強してきた人には勝てない」とつぶやいていたこともありました。
ただ、勉強時間に関係なく、彼女は本気で受かりたいと思っていましたし、受かるんだと信じようとしていました。
それが一つひとつの行動に現れていました。
勝つことだけを考えて。

「合格したい」という気持ちを言葉に出すことは勇気がいるものです。
どうしても不合格になったときのことを考えてしまうからです。
でも、言い訳の余地を残しながら勉強していると、どこかで何かが不足します。

合格したい、と口に出してみましょう。
それができる人が、合格できる人です。

※写真は去年の合格短冊です。がんばれ受検生たち。

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