緊張した小さな手を包むもの――映画館で思った、小3生たちの夏

教師の写真

執筆者

荒海 理恵

公立中高一貫校受検記述指導主任

先日、トイストーリー5を観てきました。

とくに印象に残ったシーンがあります。
女の子がごっこ遊びをしています。
あるおもちゃに爆弾がしかけられているようです。
あと何秒かで正しいボタンを押さないと爆発してしまいます。
時間がせまってきます。3,2,1……!
ぎりぎりのタイミングで、女の子が勢いよくボタンを押します。

大人の想像力だと、正しいボタンを押せて、一件落着となるのではないでしょうか。
そのごっこ遊びでは、なんと爆弾は爆発してしまいます。
女の子は「どかーん!」とさけびながら、そのおもちゃをほうりなげ、けらけら笑います。
本当によく子供を見ている人が作っているのだなと思わされるシーンです。
子供の遊びって、こういう感じですよね。
かわいくて思わず笑ってしまうシーンなのですが、作り手の子供というものへの理解と愛情を感じて、すこし涙ぐんでしまいました。

物語の途中から、おもちゃたちが持ち主の女の子に友だちを作ってあげるために奮闘します。
女の子はとても良い子なのですが、いまだにおもちゃで遊んでいる「ちょっと変な子」のようで、デバイスで遊んでいるまわりの子とはなかなか友達になれないでいます。
でも、おもちゃたちの奮闘のおかげで、女の子は自分にぴったりの友だちを見つけます。
その瞬間、劇場全体が「ああよかった」とため息をついたように感じられました。
作り手の子供への愛情が観客をつつみこむようなシーンです。

でも私は、自分の仕事と重ねるようにして観ていたから感動したのかもしれません。
私は小3の子たちを教えています。
新しく塾に通い始める子たちを迎え入れることが多い立場です。
どの子も最初はひどく緊張しています。
塾の入り口のところで、お母さんの手をぎゅっとにぎりしめながら、私(先生)のことを一生懸命観察している子。
教室に入り、他の生徒が仲良くおしゃべりしている姿を見てかたまってしまう子。
こういうとき、私たち大人はただ後ろで応援しているしかありません。
「ほら、おしゃべりしなさい」と言われたからって、おしゃべりできないですよね。

もちろんトイストーリーに出てきた女の子も、いつかは一人で友だちを作れるようにならないといけません。
今回のように、いつまでもおもちゃが手助けをしてくれるわけではないのだから。
でも、最初は、最初だけは、友だちを作れる環境を大人が与えてあげることも必要なのかもしれないなと思いました。

私たちE-styleという塾はちょっと特殊で、一つの校舎ごとにターゲットとする都立中があります。
たとえば巣鴨校なら、小石川中をターゲットとしています。だから通う生徒もみんな小石川中を志望しています。
飯田橋校なら九段中。大泉学園校なら大泉中。
本当に不思議なのですが、志望校が同じ子たちを集めると、何かしらの「色」みたいなものが見えてきます。
まだ入学しているわけではないのですが、それぞれの都立中の校風とよく似た雰囲気が生まれるのです。
同じ志望校の子たちは、何かしら共通点があるのでしょう。
だからなのか、E-styleに来た小3の子たちはすぐに友達を見つけます。
「塾の友達だと、学校では話せないことでもりあがれる!」とうれしそうにしている子も多いです。

志望校に合格すれば、そのあと6年間一緒の学校で過ごすわけです。
E-styleで小3のころからクラスメイトで、一緒に志望校に合格して、来年同じ大学を受験するという卒業生もいます。
彼女たちは、もう12年近く一緒に過ごしているわけですね。
塾もこういう友だちを作る環境になるのだなと思います。

そんなことを映画を見ながら考えていました。

E-styleでは毎年、夏休み中の体験講座に小3生もたくさんやってきます。

新しい環境に慣れてもらい、志望校に向けた学習の第一歩をふみ出す子供たちと、どんな楽しい授業をしようかな、と今年の夏はいつも以上にわくわくしています。

カテゴリー

新着記事

アーカイブ