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執筆者

林川 敬

吉祥寺校校長・武蔵高校附属中学校専門担当

2025年度入試が終わりました。今回は、都区立中高五一貫校の今年度入試の概況についてお話しいたします。

【倍率】

今年の都区立一貫入試の「受検倍率」は3.43倍で、昨年から0.44ポイント下がりました。最も倍率が高かったのは三鷹中等教育学校(以後、都立三鷹中)で4.27倍、最も低かったのは武蔵高等学校附属中(以後、都立武蔵中)で2.28倍でした。

 

受検倍率が前年よりも上がった学校はなく、全校が倍率を下げています。最も下げ幅が大きかったのは小石川中等教育学校でマイナス0.77ポイント、次いで立川国際中等教育学校のマイナス0.75ポイント、桜修館中等教育学校がマイナス0.63ポイント、両国高等学校附属中学校がマイナス0.5ポイントと、私立一貫中と「併用受験」する人の多い都心部を中心に倍率が大幅に下がっています。少子化による影響で、毎年0.3~0.4ポイント程度の下落が続いても不思議はない状況ではありますが、東京都のいわゆる「私立高校の授業料無償化」の影響からか、それを超える下落となっている印象です。昨年は都区立中高一貫校11校のうち、4校が4倍以上でしたが、今年は4倍以上が都立三鷹中のみとなり、都立武蔵中を除く9校が3倍台となりました。

 

これだけの低下となると、都立中高一貫校の人気に陰りが出てきていると見る向きもあります。しかし、もともとが「過熱」というほどの高倍率でしたから、「他の入試形態と変わらなくなった」という考え方もできますし、都立一貫校が「経済的なメリットが大きい」という感覚ではなく、校風や適性検査対策学習に真の魅力を感じている「本当の第一志望者だけの戦い」になったと見ることもできます。

 

また、都立一貫入試は、「進学する価値」もさることながら、合格を目指して努力する「過程」にも大きな価値があります。すなわち、「読み取る」「暗記する」「あてはめる」だけではない、「考える」「表現する」という学習の「本来の姿」にこそ大きな意義があるのではないでしょうか。表面上の倍率の低下を「入りやすくなった」と捉えることも得策ではありません。表面上の数値に振り回されることなく、日々の学習に真摯に当たってもらいたいと思います。

 

【男女枠撤廃】

これまでの「男女の合格ラインの差」から「男子は厳しい戦いとなるだろう」ということは盛んに言われていましたが、枠が撤廃されたときに、そうは言っても女子の在籍比率が高くなりすぎれば、施設や授業の実施方法の面で様々な支障が生じるだろうことからも、何かしらの調整があるのではないかと推察しておりました。

 

まだ正式発表がございませんので何とも言えない部分が多いですが、2月3日当日の様子を塾生から聞き取った内容からは、「予想よりも男子が減っていない」という印象です。しかし、合否結果を見る限りでは、逆に「男女の合格率の差」が予想以上に開いている感じがします。つまり、「調整」がまったく行われていないのではないかという予測です。これを公立学校ならではの対応とみるか、調整したくてもできなかったとみるか、はたまた、出題された問題が全体的に平易になったため、結果的に通知表の影響力が高まったことで「女子有利」となってしまったのか、いずれにせよ入学者の男女人数比を見てみればはっきりするでしょう。

 

これらの「入試概況」に関しては、3月16日実施の「入試報告会」で詳しくお話しいたします。今後、制服採寸や教科書配付などの登校日の様子などからもさまざまに推測できるところです。現状が分かり次第、順次お知らせしてまいります。

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